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長い廊下を歩いていた。
沢山の窓にはステンドグラスが施され、さしこむ光は七色に輝く。
白亜の大理石の上。
知ってる…。
この廊下を、私は知っている…。
漠然と感じる自分がどこかにいる。
朦朧とした意識の中、幾人もの自分がいるような錯覚。
――ああ、そうか…
これは夢なんだ。
夢の中のアイラは、黒い甲冑を着込み、悠然と歩く。
「アテナ様!」
それは自分の名前ではない。
それでも、夢の中のアイラは振り向いた。
振り向いた先には、鮮やかなピンクの髪、灰色の人懐っこい瞳を持つ…ヘスティアがいる。
「また、魔物討伐ですか?」
「まぁね…。今回のはどうにも厄介だってんで、わざわざ私が出向くことになったのよ」
「最近魔物が増える一方ですわ…」
当たり前のように会話を交わす。
全然知らない…それでもどこか懐かしい映像。
「アテナ様、どうかお気をつけて」
「誰に言ってんの?」
不敵に微笑み、その場を立ち去るアイラ。
後に響くのは、甲冑の擦れる音と、力強い足音だけ…。
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