🌸千本桜🌸

わがままお嬢様.

物心ついたぼくは、
なにしろばあちゃんっ子だった。
お母さんがいようが、ばあちゃんが習い事の日舞に出掛けると、一時間は泣いた。しまいには「こんなことで泣くな‼」と、父にｹﾂを叩かれて余計泣いた夜もあった。
民謡にはついていった。
おばちゃんたちに可愛がられた。特に民謡の先生の奥さんは子どもがいない分、我が子のようにぼくを可愛がった。
ぼくはやがて
「ｼｬﾝｼｬﾝ馬道中唄」という宮崎の民謡を覚え、
幼児がなんやら難しい言葉を歌うのを面白がる大人たちに何度も歌わされた。
歌わされるとも思わないぼくは歌手気分だった。

ｼｬﾝｼｬﾝ馬道中唄を覚える前に、生まれて初めて覚えた歌がある。

それは
川崎病という後々心臓に後遺症の残る病気にかかり、入院した際に、祖母の妹の節子おばちゃんが教えてくれた歌「むすんでひらいて」だ。

何の記念か忘れたが、家族と両方の祖父母で東京旅行に行った際。
鳩にまみれたぼくはお母さんに
「こっちよ‼✋」
と呼ばれると、
ぷ～いと反対方向をむいてすたこらと走ったり、
やがて３歳になるくせにディズニーランドでは乳母車に無理やり乗ったり…
わがままっぷりは天下一品だった。

父方の祖父は
いわゆる
ハゲ
だった。
ぼくはそのツルツルした頭を
パチン✋💥と
叩くのが楽しみだった。
叩いてもにこにこして黙っている温和な祖父だった。
いつも焼酎をお湯割りで飲んでいた気がする。
いまでも焼酎のぷんとした匂いをかぐと祖父を思い出す。いつも祖父は「寛子、泊まってけ😃」と言っていた。何を根拠にか「嫌だ！じいちゃんの部屋は幽霊がおるもん！」と丁重に断った。
「な～ん、幽霊ならじいちゃんが撃ち殺したけん！」といつも祖父は言っていた。するといつも祖母が「無理ば言わんよ！」と言った。
とある日曜日、
いつものごとく
ぼくは祖父の額をパチンと叩いて、
何を陽気に調子に乗ったか、居間をダッシュで一周して祖父の額を叩いてまた一周して…を繰り返した。
端から見たら奇行以外の何者でもない。
そしてあははと笑いながら案の定目が回り、
炊飯器（当時の炊飯器のふたのふちは劇的に熱かった。わかるひとにはわかる✊）にダイブし、唇を火傷した。

調子に乗ると痛い目にあうのは
昔かららしい。

一方母方には、曾祖父母が健在だった。たまに阿蘇の山奥から市内におりてきて会いにいっていた。曾祖父のほうは、姉とぼくの名前を忘れるという記憶しかない。