「何それ?美味しいの?」

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 暗幕で締め切られた部屋の中、ゆらゆらと揺れるアルコールランプの炎が、コポコポと音を立てるフラスコの前に佇む男を照らし出している。   「もう少し……、あと少し……」    アルコールランプの灯りに照らし出された男の顔は、スッと通った鼻のラインに、重力に従い、下に向かって垂れ下がるサラサラの黒髪、そして、その隙間から覗く切れ長の双眸が特徴的。  一言で言ってしまえば「イケメン」。  そんな「普通にしてれば何もしなくても女の子が寄ってきそう」な彼の顔に浮かんだ、期待に満ちた笑みは、時間の経過に合わせて、だんだんと怪しげな笑みへと変わりつつある。   「お?」    それまでじっとフラスコを眺めていた男は、その中の変化に気付いて短く声を上げた。  フラスコの中に満たされた得体の知れない緑色の液体は、沸点を超えていることを示す透明で澄んだ泡を立て、その底部では金属らしき塊が浸かっていたのだが、その泡立ちが急激に勢いを増したのだ。   「おい勇介、ちょっと見てみろ!!歴史的瞬間だぞ!!」    興奮した様子で振り返った怪しげなイケメンは、手持ち無沙汰な様子でパイプ椅子に腰掛けていた、もう一人の青年に声をかけた。   「あ~、ハイハイ……」    言われて腰掛けていた青年は面倒くさそうに立ち上がり、これまた面倒くさそうに、怪しいイケメンと怪しいフラスコへと足を向けた。  
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