「何それ?美味しいの?」

7/26
前へ
/472ページ
次へ
「それで、今回は何だったんだ?」    暗幕を取り外し、日の光が差し込むここは「超考古学研究部」の部室の中。  非公式サークルでありながら、どういう手段を使ったのか、唯一この部室棟の一室を使う事を許されたサークルだ。  そんな怪しいサークル名の手書きプレートが掲げられた部室の中、先程の爆発で飛び散ったガラス片を箒でかき集めながら、俺「高城 勇介」は呆れモード全開で口を開いた。   「ん~錬金術?」    フラスコの中に入っていた塊を摘んで、ためつすがめつしながら、怪しげなイケメンこと「篠田 アーサー」はそんな事をサラッと言ってのける。   「錬金術?あの、マンガとかに出てくる、鉄を金に変えるってヤツか?」 「そ。でもまぁ、失敗みたいだけどね~」    あれだけの騒ぎを起こしておきながら、あはは~などと極めて軽く笑って言ってのける張本人。    こいつは、昔からそうだった。  興味を持ったものは徹底的に追求しないと気が済まない性分で、小学生の頃からこいつの思い付きに振り回されてきた。    良く言えば好奇心旺盛な実践派、ぶっちゃけて言えば、奇行の目立つ変人。  黙っていればハンサムな顔立ちのクォーターなんだが、その奇行が目立ちすぎて今までに一度もこいつの浮いた話を聞いたことがない。   「失敗って……、お前俺にケガさせようとしてまで何作ろうとしてたんだ?」    俺は呆れて、箒の柄の先に重ねた両手の甲に、顎を乗せて溜め息を吐いた。    「金、だとありきたりだからね。伝説の金属を作ってみようかと」    言いながら、アーサーは眺めていた塊を机の上に置いた。   「伝説の金属?」 「そ。地球上の何よりも硬く、羽毛のように軽いという、オリハルコン」    その言葉に、俺は更に深い溜め息を吐き出した。
/472ページ

最初のコメントを投稿しよう!

554人が本棚に入れています
本棚に追加