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これは私が小さい頃の話です。家の近所に小川があり、ある日、そこで弟と竹の葉で笹舟を作って競走してました。スタート地点とゴール地点を決めて、三回競走するうち、二回勝った方の言うことを聞くルールにしました。
まず一回戦。私が勝ちました。
弟「くっそー!」
かなり悔しがっていました。
二回戦。スタートさせてから間もなく、もう一つの舟が現れました。私は弟が二つ流すと言う卑怯な手を使ったと思って
私「二つ流すなんて、さっき負けたからって卑怯だぞ!」
弟「知らないよ。俺は一つしか流してないよ」
と言いました。弟があまりにも真剣に言うので、たまたまスタート地点よりも前に流した奴がいて、たまたま自分達の競走にまぎれたのかなと思いました。もう一つの舟は、そのまま私と弟の舟を抜き去りゴール地点を通過しました。その次に通過したのは弟の舟だったので、結果的には二回戦は弟の勝ちです。
三回戦。舟をスタートさせたのですが、スタートの瞬間、弟はスタート地点から一歩前に出てスタートさせました。
私「卑怯だぞ!」
弟「へへーんだ」
すると、弟の舟はすぐに石に引っかかって動けなくなりました。
私「ハハハ。卑怯な手を使うからだ。ハハハ」
弟「兄ちゃん!またもう1つ舟がやってきたよ」
私「うそ!?」
すると、私の舟も石にひっかかり、もう1つの舟がゴール地点を通過しました。するとゴール地点には、当時の私と同世代くらいの男の子がたっていました。向こうの景色が透けて見えてたので、私自身小さいながらも生きてる人間では無い事が分かりました。
男の子「僕が二回勝ったから、僕の言うことを聞いてもらうよ。それじゃ……君たちの家で飼ってる犬が欲しい」
弟「嫌だ!絶対にあげない」
私「お前は勝負には関係ないだろ!」
すると、男の子は微笑みながらスゥーっと消えていきました。
取りあえず私と弟は、競走の事はどうでも良くなり、急いで家に帰り犬がいるかどうか確かめました。
犬「ワンワン」
私と弟は一安心しました。ところが翌日、突然犬が脱走し、いなくなりました。私と弟は友達とお巡りさんにも頼んで一生懸命探しました。
それから2週間経った時、犬とは別な形で再会しました。私の近所の小川で溺死していました。犬の周りには沢山の笹舟が引っかかっていました。とにかくその時の私は、男の子の幽霊を見た恐ろしさよりも、男の子の幽霊に対する憎しみの方が勝っていました。
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