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大きな窓のカーテンを左右に勢いよく引っ張る。
「おはようございます。とっとと起きて下さい。マーサ様が首を長くしてお待ちですよ!」
朝の眩しい陽射しを直接浴びて呻いた男は、自分に向かって失礼な口を聞いた人間を睨み付けた。
「そんな目をしたって眠いのは変わりませんよ。早く顔を拭いて下さい」
他の人がされると必ず平伏す視線に全く動じる事なく、侍女は水で濡らした布を差し出した。
「…ん」
とろとろと毛布をめくり身を起こした国王は、おとなしく布で顔を拭く。
「覚めました?」
「…あぁ。マーサはどうした?」
「とうに朝食の準備をして待っておられます」
早く歩けとばかりに背中を押され、国王は首をかしげた。
乳母には様付けで丁寧な口調で話すくせに、主人の自分はこんな扱いなのか。
「……あー…」
まぁ、いいか。
侍女が恭しい態度をとった所を頭に浮かべて気持ち悪くなった国王は、それを即座にかき消そうと頭を振る。
「今日は、あの日だな?」
気を取り直して国王が発した言葉に、侍女が本当に珍しくフワリと微笑んだ。
「えぇ、そうです」
「なら、早くするとしよう」
天気のいい日に行われる恒例行事は、毎回欠かす事なく行われている。
侍女の強制執行によって。
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