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「……何を、している?」
侵略された城のある一室。
微かに歌声が聞こえたそこの扉を勢いよく開けると、目にした光景に国王は普段全く反応を示さない目を軽く見開いた。
「…わかりませんか?子守歌を歌っているんです」
血まみれの国王に驚きもせず一言だけ返すと、寝台のそばに膝をついていた侍女はそこで目を閉じている少女の頭を撫でる。
「ようやく、眠っていただけた…」
ほっと息を吐き出すと、侍女はおもむろに握っていた小刀を自分の首元にむける。
「とっとと退室して頂けませんか?」
貴方は敵国の国王でしょう、と一国の主に対して余りにも無礼な口をきく。
しかしそれは敵だから近付くなという意味ではなく、関係ないのだから放っておいてくれということなのだろう。
実際侍女は、もう全く国王の存在を意識していない。
思い切り刃を首に突き立てる……
何故だろう。
国王は内心首をかしげた。
自分は目の前で誰が何をしようが、こちらに面倒がかからない場合は何も気にならなかったのに。
今、自分は何をした?
「…どういうおつもりですか」
侍女は、弾き飛ばされた小刀を暫く呆然と眺めると、邪魔をした男を見上げた。
「お前がそうしたのは、あのガキのせいか」
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