試したくなる力

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検証1 「人が生み出した運動エネルギーは増強できるか」 検証する意味は、人為的エネルギーがどこまで関わるかを知るため。 手から離れたボールはその運動エネルギーを保ち、進行方向に進む。 そのエネルギーを増強できるかというもの。 「いけ…」 心の中で思う。 ―ボールは加速する― 目に映るのは、ボールをキャッチする武人。 「あれ…?」 失敗? 普通に武人キャッチしたし、力不足か? 武人は放物線を描くようにして、こちらに投げかえしてくる。 「…もう一回」 再度同じことをしてみるが、武人の胸の辺りでキャッチされてしまう。 そして武人はまた、放物線を描くように投げかえしてきた。 「隼!」 武人が呼ぶ。 手招きでこっちに来るよう、指示している。 「なに?」 「ん…」 武人は後ろに指をやり、何かを示している。 その後ろにいた者は… 「お前ピッチャーやれ」 担任だった。 「ちょっと待ってくださいよ!野球部ならいるでしょ?」 「俺はお前の肩を気に入った。つーわけで頼むぞ」 「…はい」 なんで俺がやらなきゃいけないんだよ。 こんな負ける試合。 俺は知っている…武人がフライをエラーしたために送球が間に合わず、逆転。 その時の俺はセンターだったか? ピッチャーって責任重大だぞ?むしろ俺に全てがかかってることになる。 そんな決められた運命に叶うほど俺は強くない。 今度は俺が責任で負け…か。 ―そして― 「プレイボール!」 審判のけたたましい声で試合が始まった。 もちろんピッチャーは俺。普通は活躍の場面で嬉しいはずなのだが、苦手分野ではやる気もしないし、活躍できるとも思わない。 さらに女子は試合がまだらしく、グランドの端で観戦をしている。 極めつけには、なんと後攻。即座に出番がやってきてしまった。 武人はレフト、俺がいるはずだったセンターは、敗北した試合で実際投手にいた奴。捕手は野球部で、捕球は完璧といったところだろう。 リードも何も、俺には変化球なんか無いわけで…直球といってもコントロールも無い。 では何故担任は俺を投手にしたのだろう…。 「ボール!フォアボール!」 「さぁて!相沢くん!!野球経験はあるのか!?何故担任は相沢くんをピッチャーにしたのか!」 俺が知りたい…。 まさか実況までいるとは…生徒会はなんでもやるんだな。
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