試したくない選択

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10月2日 今日は文化祭の発表内容を決める日。 もちろん昨日俺とあいつは、帰り道で会っていないのだから、あのことは起こらないはず。 「なにか意見ありませんかー?」 有るけど無い。 言いたいけど言わない。 悪いね、ルーム長 もう、裏切られたくないから。 「これじゃあ話が進まないよー」 「隼なんかないの?」 わざわざ窓際席の俺の横に来てまで聞きにくる、廊下側席の武人。 「別に。これと言った案はないね」 「そうか…」 早く離れろ。 目障りなんだよ。 「なぁ隼」 話しかけるな。 嫌な記憶が蘇ってくる。 離れろ、離れろ、離れろ。 「隼?」 離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ離れろ。 「おい隼!」 はなれろはなれろはなれろはなれろはなれろはなれろはなれろはなれろはなれろはなれろはなれろはなれろ。 「隼!」 ハナレロ!! そのとき、外から悲鳴が聞こえた。 窓ガラスが割れた。 教室内も騒ぎ出した。 外を見れば、体育をしていた生徒が風に舞い上げられている。 避難するクラスメイト。 未だ近くにいるこいつ。 「隼、早く窓から離れろ!」 寄るな来るな近寄るな! 「隼早く!」 武人が俺の肩を掴む。 触るな!!! 武人が何かの塊によって吹き飛ぶ。 「はぁはぁ…」 あいつが離れたことによって落ち着いてきた。 冷静になって武人を吹き飛ばした塊を見れば、体操着姿の男子生徒だった。 外もさっきより落ち着きを取り戻した。 もちろん、うめき声が聞こえる程度だが…。 自分の息づかいのみが響く教室。 体操着の生徒と一緒に倒れている武人。 死んだ? 殺した? 確認のために一歩進む。 ガラスを踏んだ音。 目線が下を向く。 赤く広がる液体。 紅い液体が滴る左腕。 ガラスが突き刺さっていた。 止まらない血。 霞む視界。 武人の生死も確認できないまま、俺が最後に見たのは、割れた窓から見えた、晴天の空だった。
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