試しの決意

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そして…深夜1時55分 この場所にやってきた。 某駅外の右から二番目の公衆電話。近くの電灯一本が奇跡的に明るさを保つ反面、夜の不気味さを煽る。 …あと三分。 この残り数分が、最後の確認をさせてくれているかのようだ。 本当にこれでいいのだろうか。 本当に間違っていないのだろうか。 だが決心はついている。 ―早くアイツを消してやりたい― 深夜1時58分。 鞄を片手に、震える指でダイヤルを押していく。 0…1…5……8 プー…プー… 話中の音がするだけで何も起きない。 デマか…。 そう思って電話を切ろうとした瞬間、ふと前に嫌な『モノ』が視界に入った。 俺は目を反射的に反らしてしまう。 不適に笑うあの顔。 不気味にも程がある。 でも確認しなくては… 無駄に恐怖しても意味がない。 俺はゆっくりと、目に順に映していった。 受話器を握った俺の手の手首を握る手 電話のダイヤル 電話ボックスのガラス ……次だ。 ガラスの向こう側。 …何も、何もない? 奥にある木々が見える。 「はぁ…」 深い案著な息をつく。 しかしハッと我に返る。 思い返してみろ。 今、目に映った情景を… 俺の記憶というビデオが巻き戻しを始めた。 ガラスの向こう側の木々 電話ボックスのガラス 電話のダイヤル 受話器を握った俺の手の手首を握る手… 手首を握る手…? 誰の手…? 俺のもう一つの手は鞄を持っている。 自分の手のわけはない。 今こうして考えている間にも、俺の視界の死角で手首は握られている。 恐怖にかられる俺の目に鞭を打ち、嫌々ながらも再度手首に視線を移した。 嫌な汗が背中を伝う。 …なにも無い。 痕も無い? やっと一安心できた。 俺は、さっさと受話器を元の位置に戻すと振り返る。 するとそこに、『モノ』がいた。 「うわぁぁぁ!!!」 先程ガラスの向こう側にいた『モノ』。 今もガラスの向こう側だが、今は一瞬ではなく、すでに俺は凝視できている。 「やぁこんばんは」 黒いスーツに身をつつみ、明るさなどを一切感じないその服装。 若い男性…というか、俺とタメというか…。 「……」
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