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『モノ』はニッコリと笑い、手を差し延べてくる。
そこにはガラスがあったはずなのに…
いや、気づいた時にはもう何もなかった。
あるのは俺と『モノ』。
あとは、ひたすらの暗黒…闇の中。
暗い暗いこの世界。
閉ざされたこの世界。
「ようこそ、相沢隼くん。今までの経緯は見させてもらったよ」
人を見透かすような眼差しを向けてくる。
殺意を感じられないその瞳に、不思議と安心感が芽生えた。
「にしても…さっきは驚き過ぎだなぁ」
『モノ』はクスクス笑っている。
「んで、ここに来たってことは消えてほしい人がいるってことだよね?」
いいかげんコイツに恐怖を感じなくなる。
「あぁそうだよ。できないならできないでよかったけど、アンタが出てきたって事はできるんだろ?」
「できるよ。殺る?」
「…あぁ」
『モノ』は口元をニヤリとさせると腕を組んで目を閉じた。
「よし、これから僕が説明してあげるから、しっかりと聞いているように」
「……」
「まず消えてほしい、殺したい人の名前を言ってもらおうかな?」
「渡辺武人、俺の同級生だ」
「ふーん。次に殺し方だけど…僕は手を出さないからね」
「な!?それじゃあ俺がここに来た意味がないじゃねぇか!」
胸ぐらに掴みかかる。
『モノ』は少し慌てた様子で弁解を始めた。
「ちょっと待った!誤解だって!隼くんが殺るのを邪魔しないって意味。直接手を出したりしたらつまらないでしょ?第一何で僕が知らない人を殺したりしないといけないわけ?」
掴んだ手を振りほどき、服装の乱れを直す。すると突如真剣な目付きをこちらに向けてくる。
「それで方法だけど…。直接的に殺す事はできないんだ。間接的に殺す必要がある。だから僕が隼くんに物に働いてるエネルギーを増幅、又は強大にさせる力をあげるよ」
「…あ?」
「例えば、事故だよ」
「なら…」
「だけどねぇ、この力には決まりがある。
1.何かしらエネルギーが働いている物しか使う事ができない。
2.人為的エネルギーが働いている物は使う事はできない。」
「んぁ??」
『モノ』は物分かりが悪い俺に対して頭をかいて、困った表情をして見せる。
どこかわざと臭い仕草にも見えた。
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