試したくなる力

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……………。 ……。 …。 「ん…?」 鳥の冴えずりに目を覚まし、俺は辺りを見回した。 俺が好む漫画が綺麗に並んだ本棚。 さらに俺が好むアーティストのポスター。 独特な部屋の匂い(芳香剤の匂い) 間違いない。 「俺の部屋だ」 ベッドの中に俺はいた。 まるでここで寝ていたように。 確か俺は某駅の公衆電話に行ったはずだ…。 ―僕がアンタをコロスから― 目覚めたばかりの脳に、あいつの言葉がよぎる。 あぁそうだ。殺戮劇はもうすでに始まっているんだった。 さて、どうやって殺ろうか… 時間は3日もあるんだ。 焦る必要はない。 じっくりと痛めつけてから殺してやる。 人を殺すというのに、なぜ躊躇わないのか。 分かりきっている。 俺の命もかかっているからだ。 朝の支度を終え、俺は念のために確認を取りたい事があった。 「母さん。今日は何月何日だっけ?」 「はぁ?寝惚けてんの?10月1日でしょ?」 俺があの場所に行ったのは、3日の深夜1時58分。言い換えれば4日の午前1時58分。 しっかり時間は戻っている。 この時間までに奴を、渡辺武人を殺す。 「さて、次は…」 自分の命を賭けて手に入れた、物に関わるエネルギーを増強させる力。 「試してみる必要があるか…」 正直使い方が分からない。さらにどれだけ強力にできるのか、俺は検討もつかなかった。 いつも通りの時刻に家を出る。歩いて間もないというのに、頬を伝う汗。まだまだ残暑が残り、軽く蒸し暑いのが原因である。 そんな暑苦しい時に会いたくない奴ほど、出会してしまうのが俺であった。 「ドス」 ほら来た。 「よぉ」 まだ暑苦しいというのに、こんな通り魔的な事―後ろから指を突き刺してくる。しかも効果音付きで―をされると直、腹が立つ。 「なんだよ武人」 「いや別に」 用もなく、ただのいたずら。 「武人、もしかして俺フェチ?」 「な!?違うよ!」 動揺が顔にでてる…。 俺は、冷静を装いつつも、かなり心にダメージを負った武人に更に追撃を加える。
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