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「俺フェチじゃないなら、毎日そんなことしないよね?俺が気になるからそんなことすんじゃないの?こう、ドスって効果音付きで…」
俺は武人のマネをしてみせる。
少し被害妄想かも知れないが、正直毎日やられている俺の身になって考えてみれば、これは良い機会だ。
一気に、たたみかけてやる。
「毎日毎日よく飽きないな…あ、それもそうか。俺フェチなんだから」
「違うって言ってんだろ!」
逆ギレかよ。
武人はムスッとした態度で先に行ってしまった。
まぁでも、これで無駄に体力を消費しなくて済む。
一人になった俺は、力を使える何か適当な物を探した。
木、葉、葉が揺れる。
…風。風か…。
何となく手を目的の方向へ前に突きだし、思った。
―風があの葉を吹き飛ばす―
と…。
そのときだった。
一つの突風が木の葉という葉を全て持っていった。
「すげぇ…」
開いた口が塞がらないとはこの事だ。
そよ風が突風に変わった。
凄い。
凄い凄い!
何だかこの力を持つことだけに満足してしまいそうになる。
だが忘れてはならない。
この力の代償は、自分の命であることを。
確証を得た俺は、足早に学校へ急いだ。
教室では何やらざわついていた。体操服やジャージに着替えている者が多い。
自分の記憶が正しければ、今日の一限は数学だったはず…。
その中の一人を捕まえ、質問した。
「何でみんな着替えてんの?一限は数学でしょ?」
「なに言ってんだよ。今日は球技大会だろ!」
「えっ?前やったじゃん。またやんの?」
「はぁ?今年は初めてだよ。頭大丈夫か?」
大丈夫だよ。
お前こそ大丈夫かよ。
いまいち状況が掴めない俺に一本の何かが腹部に沈む。
「ドス」
またお前か。
振り返らなくてもわかる。俺フェチの武人だ。
「またやったな、俺フェチの武人め」
「えっマジかよ。武人ってホモなの!?」
「ち、違うよ!」
人の前で俺フェチと言ってしまう俺もどうかしているし、一歩間違えれば、俺もホモと疑われてしまう。
しかしまぁ、こいつがノリの良いやつでよかった。
これで人前でもやらなくなるだろう。
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