試したくなる力

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「とりあえず隼、お前もさっさと着替えろよ。野球でもやれば目も覚めるだろ?」 体操服を取りにロッカーへ… だが俺は納得がいかなかった。 球技大会で野球? 俺らは一回戦でボロ負けしただろ? まさか、敗者復活戦でもやるのか? あぁやだな。武人のエラーが俺にまで響いたあの試合。またやんのかよ…。 俺は訳がわからないままに友達に促され、体操服に着替えてジャージを着込む。 まてよ。 また? またやる? 一度やったものをまたやるのか? ―今から3日前の朝に― あ、そうだ。 時間は戻されたんだ。 つーか、朝確認したし。 だから一度済ませた日程も、また行われるわけか。 ならこんな勝敗がわかった試合。全力でやるだけ無駄なのか…。 いや待てよ。 あるじゃん。 野球だよ。 どれだけエネルギーが働くのだろうな。 実験にはもってこいだ…。 俺は笑いたくなる気持ちを押さえ込み、友達とグランドに出た。 絶好の運動日和。 朝感じた蒸し暑さなど、これから起こる楽しみに比べれば、どうということはない。 はずだった…。 「いくぞ隼!」 なんで俺はこいつ=武人とキャッチボールをしてんだよ。 「行ったぞ隼!」 しかも… 球反れてるし。 担任がこっち見てるし。 やりづらい…。 「このバカが…」 ボールは案の定、俺から逃げるように反れ、かなり遠くまで武人と離れてしまった。 「無駄に走らせるなよなぁー」 ふとボールを拾って武人を見る。 しっかり取れよ、と言ってるかのような待ち方をしている。 こいつ…。 誰のせいでここまで来たと思ってんだよ。 ………。 いいや、腕の一本ぐらいへし折ってやる。 殺意にも似た遊び心。 「武人ー!投げるからしっかり取れよー!」 俺は気分で大きく振りかぶり、そしてとりあえず全力でレーザービームのごとく、武人の胸めがけて投げる。 普通に放物線を描くように投げても、まず50mも飛ばない非力な俺。
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