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小雨降る、ビルとビルの間にある、広い広場。
そこにある噴水からは、水が勢いよく出ていた。
周りはベンチに囲まれ、昼時になるとランチを食べる会社員で溢れている。
しかし、今日は小雨。
昼時でもないにしろ、広場には誰もいない。
…はずなのだが、1人の女性が濡れたベンチに座り、傘も差さずにため息をついている。
スーツ姿のその女性は、まだ午前中だというのに、仕事をするつもりがないのだろう。
まとめていた髪を無造作に振り解き、焦げ茶の髪をかきあげ再び深くため息をつく。
(なんであたしが…)
空を見上げ、女性は雨雲を睨んだ。
その目からは涙がこぼれ落ちている。
小雨程度ではなかなか流れ落ちることのないほどの滴が。
(バカ兄貴…)
空を睨んだまま、涙を流したまま、兄に対して悪態をつく。
つかなければ、やってられない。
兄のせいで会社に多大な迷惑をかけてしまった。
そのため、たった今辞表を出してきたところ。
やり場のない怒りがこみ上げてくる。
空を睨むのをやめ、今度は真っ直ぐ前を睨んだ。
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