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小雨だった雨は、徐々に強く降り出してきた。
女性は立ち上がると、少年の手を引き歩き始める。
驚いたのは、もちろん少年。
(え?学校連れてかれる?)
そんな考えしか頭に浮かばないし、行く気は全くない。
何も言わない彼女の手を、なぜか振り解くことはできなかった。
振り解いてどこに行くのか聞きたいのに、それができずに成すがまま。
歩道を傘も差さずに歩く2人は、端から見れば滑稽だ。
広場に誰もいなくとも、そこから一歩出れば平日で雨と言っても、やはり人は多い。
少年は女性に手を引かれているだけでも恥ずかしいのに、周囲の目によりさらに恥ずかしく思う。
(…今日は厄日かなんか?この人、マジでどこ行く気だ?)
そんな少年の思いなど知らず、女性はズンズン進んで行く。
少し、足早に。
恥ずかしいのは女性も一緒だった。
(…あぁ、あたしバカ…あたしマジバカ…何やってんだろ…)
それは、少年の手を引いていることなのだろう。
自分にとっても予期せぬ行動で、実は引くに引けなくなっていた。
(これ、拉致?拉致になるの?ならないよね?)
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