雨拾子

4/11
前へ
/105ページ
次へ
小雨だった雨は、徐々に強く降り出してきた。 女性は立ち上がると、少年の手を引き歩き始める。 驚いたのは、もちろん少年。 (え?学校連れてかれる?) そんな考えしか頭に浮かばないし、行く気は全くない。 何も言わない彼女の手を、なぜか振り解くことはできなかった。 振り解いてどこに行くのか聞きたいのに、それができずに成すがまま。 歩道を傘も差さずに歩く2人は、端から見れば滑稽だ。 広場に誰もいなくとも、そこから一歩出れば平日で雨と言っても、やはり人は多い。 少年は女性に手を引かれているだけでも恥ずかしいのに、周囲の目によりさらに恥ずかしく思う。 (…今日は厄日かなんか?この人、マジでどこ行く気だ?) そんな少年の思いなど知らず、女性はズンズン進んで行く。 少し、足早に。 恥ずかしいのは女性も一緒だった。 (…あぁ、あたしバカ…あたしマジバカ…何やってんだろ…) それは、少年の手を引いていることなのだろう。 自分にとっても予期せぬ行動で、実は引くに引けなくなっていた。 (これ、拉致?拉致になるの?ならないよね?)
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

950人が本棚に入れています
本棚に追加