950人が本棚に入れています
本棚に追加
secret HOTEL──
そびえ立つホテルを前に、珍しく緊張の色を隠せない。
高校生である自分が突然訪ねて行って、果たして取り次いでもらえるだろうか…
もしかしたら門前払い?
考えが弱気になっていた。
休日の昼間、ホテルを利用する者が多いのか、入り口からは絶えず人が出たり入ったりしている。
(…今日、休みだったりして…)
そういえば…と思い出す。
楓は休日出勤はあまりしていなかった、と…
はぁ~っと盛大にため息をつき、躊躇う足を近くのベンチに向けた。
ここまで来たのに、やっぱりまだ躊躇ってしまう。
あんな別れ方をした手前、どんな顔をしていいのかがわからない。
あの笑顔はもう見られないのだろうか…
会った時、逃げたりしないだろうか…
そんな考えばかりが頭を巡る。
(ダメじゃん…マイナスなことばっか考えてたら前に進めないだろ…)
立ち上がり、もう一度ホテルの入り口を見た。
よし、行こう。
そう決意して一歩踏み出す。
一歩一歩、ゆっくりと。
確実に。
最初のコメントを投稿しよう!