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「…聡吏くん、ありがとう…また会ってくれて…」
何を言おうか迷っていると、楓がお礼を言ってきた。
「会うよ…ってか、会いたかった…」
素直に口にすれば、あの日を思い出してしまう。
「…ごめん…本当は会いに来るなんておこがましいことだってわかってるけど…」
座ることも忘れ、とにかく謝ることを最優先。
「けど…アイツが…違うって…俺…」
「…聡吏くん、もういいよ」
「俺!いっつも後先考えないから!楓さん、いっぱい傷つけてさ…」
「うん…」
「側にいてあげることもできなくてさ…辛いんだってわかってても…感情がコントロールできなくて…」
一歩近づいて楓の細い腕に触れた。
触れた瞬間、懐かしい感情が蘇り目に涙が溜まる。
「…アイツから話を聞いた時、すぐにでも会いに来たかった…」
「うん…」
ただ聡吏の話に相槌を打つ楓は、愛しい人の頬を伝う涙をそっと拭う。
カッコ悪いとか、そんなことを考えている余裕はない。
楓を前にして、会わなくなってからの感情が止めどなく溢れてきて、もうカッコ悪いとかカッコいいとか関係ない。
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