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音が出ている先には、扉があった。
戸惑いながらもゆっくりその扉を開けると、その部屋は防音装置が設置されているようで、かなり大きな音が鳴り響いていた。
…ピアノの音色だ。
だだっ広い部屋の真ん中に置かれている、立派なグランドピアノの椅子に座り、演奏していたのは龍也だった。
ショパン作曲。
幻想即興曲。
悲しくも激しいそのメロディーと音色に、花は思わず息をのむ。
龍太郎と瓜二つの龍也が、長い指で優雅に演奏するその姿は、それだけで絵になっていた。
その時。
龍也の長い指が絡まり、曲が止まった。
突然訪れた静寂に、花ははっと我に返る。
改めて龍也に目を向けると、震える両手を見つめ、唇を噛みしめているようにも見えた。
思わず後ずさりをした花の足音に、龍也が勢いよく扉の方を振り向いた。
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