運命

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花の姿を確認した龍也は、鋭い視線を花に向ける。 「あ…ごめんなさい。 音が聞こえたがら…」 思わず弁解する花に、龍也は不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。 「もしかして… 龍太郎から聞いてる? 俺がピアニストだったってこと」 ゆっくり歩み寄る龍也に、花は若干の恐怖を感じたが、逃げ出すわけにはいかない。 いきなり聞かされたとはいえ、龍也は正真正銘、龍太郎の兄弟なのだ。 不意に、龍也の発言に違和感を感じる。 花は首をかしげた。 「ピアニスト…だった? 今もピアニストなんじゃないの?」 花の言葉に、龍也は明らかに表情を曇らせた。 そして花が入ってきた扉を勢いよく閉める。 限られた空間に、花と龍也、二人きりとなってしまった。
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