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「…行けよ」
つぶやくような声で、またも花に背を向けながら言う龍也に、花はそれ以上何も言わなかった。
そしてその場をあとにした。
龍也がピアノを弾いていた時。
花は確信した。
龍也の判断は間違っている。
一流企業を背負って立つために必要な野心と、希望がまったく感じられない。
どちらかと言うと…絶望感。
何か投げやりになっているとさえ思えた。
「どこ行ってたんだよ」
応接間に戻った花を見て、心配そうに龍太郎が駆け寄ってきた。
「えっと…
お手洗い探してたら、広いから迷っちゃって」
「そっか…
一言くらい言ってくれたらよかったのに」
「ごめんなさい」
花は微笑み、2人は両親が座る向かいのソファーに腰を下ろした。
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