運命

43/49
前へ
/386ページ
次へ
「…行けよ」 つぶやくような声で、またも花に背を向けながら言う龍也に、花はそれ以上何も言わなかった。 そしてその場をあとにした。 龍也がピアノを弾いていた時。 花は確信した。 龍也の判断は間違っている。 一流企業を背負って立つために必要な野心と、希望がまったく感じられない。 どちらかと言うと…絶望感。 何か投げやりになっているとさえ思えた。 「どこ行ってたんだよ」 応接間に戻った花を見て、心配そうに龍太郎が駆け寄ってきた。 「えっと… お手洗い探してたら、広いから迷っちゃって」 「そっか… 一言くらい言ってくれたらよかったのに」 「ごめんなさい」 花は微笑み、2人は両親が座る向かいのソファーに腰を下ろした。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19850人が本棚に入れています
本棚に追加