19848人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
「…龍也」
不意に口を開いたのは、父親だった。
父親は地面を睨んだまま、苦い顔を浮かべている。
「お前は…
社交的で、ずる賢くて、頭が切れて…
この神谷商事のトップに立つために生まれてきたようなものだ」
「あなた!」
頭を抱えて座り込んでいる龍太郎を、あまりに不憫に思った母親がつい叫んだ。
しかし父親は、それを手のひらで制しながら話を続ける。
「それに比べて龍太郎は、陰気で、執念深くて、弱々しくて…
まったく向いていない。
EI電力のご令嬢との結婚抜きにしても、どちらを跡取りにするかなんて決まってる」
花は思わず、脱力している龍太郎の左手を両手で握りしめた。
最初のコメントを投稿しよう!