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「…だがな」
力なく一点を見つめていた誰もが、ふっと顔を上げて、父親に視線を向ける。
「龍太郎は、ここ数年で予想以上の努力をしてくれた。
それはもうこっちが呆れるくらいにな。
今や、龍太郎の評判の良さは神谷商事にとどまらない。
丸山コーポレーションの社長や、龍太郎と営業で関わった会社の部長や専務。
目の肥えた方々から、お褒めの言葉を毎日のようにもらってるんだ」
龍太郎は目を丸くした。
仕事のことでは誰よりも厳しく、ほめられたことも、努力を認められたことさえなかった。
もっと伸びろと言わんばかりに、威圧的な存在だった父親からの予想外の言葉に、思わず目が熱くなっていた。
父親は顔を上げ、まっすぐに龍也を見つめる。
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