運命

49/49
19849人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
「龍也。 これは神谷商事の社長としての考えだ。 私は、神谷龍太郎という逸材を手放すわけにはいかない。 こいつ以外に神谷商事を任せることは出来ない。 こいつは… 努力で天性を覆したんだ。 …運命なんて存在しない。 努力で人生何とでも転がるものだ」 知らぬ間に花の瞳からは涙が溢れていた。 これは、父親が龍太郎を気づかって下した判断ではない。 龍太郎の努力が、社長に認められた瞬間なのだ。 握りしめる花の手を、龍太郎は強く握り返す。 しばらく無表情で黙っていた龍也が、フッと微笑んだ。 「…努力で人生なんて何とでも転がるか… だったら… 俺も自分の道を極めることが出来るのかな」 「当然だ。 お前は私の息子だろう?」 父親の微笑みに、龍也の瞳からは涙がこぼれ落ちた。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!