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『先生もお疲れさまです。トロッカー入れた人は落ち着きました?』
私は顔を上げて笑顔を作った。
『丁度、病棟に様子見に行ってきた。
まぁ…暫く痛みが強くて可哀想だな…。
櫻井さんは帰るのかぁ~いいなぁ~』
『先生は…今日も大好きな病院にお泊まりですか?』
口を尖らせる先生を見て、わざと意地悪く笑って見せる。
『そっ、俺って病院が大好きだから…ってそんな訳ないだろ!!
もぅ2日家に帰ってないよぉ~。奥さんは俺がいない方が楽でいいみたいだけど(笑)』
『あ、それ私も分かりますよ。昔から言いますから「亭主元気で留守が良い♪」…このフレーズ考えた人って天才!!』
『うわっ!いたよ此処にも鬼嫁が!』
私がケラケラ笑うのを見て呆れ笑いをした後、
『じゃ、お疲れさま~!』
橋本先生は手を軽くあげ再び外来へと歩き出す。
『お先に失礼します』
私は先生に軽く会釈をし反対側へと足を向けた。
『さ…早く帰らなくちゃ…』
深いため息を足元に落とすと、再び職員専用通路へと歩き出した。
…………
後日届いた情報によると、当院では解剖を行わなかったが、医師による死亡診断書の内容から警察官による検視が必要と判断。かかりつけ医の協力も得られ、火葬直前に改めて「病死」と断定されたとの事。
…………
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