胸に咲く桜

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「こんにちは~櫻ちゃん。あ、ピンクリボンも新しくなってる!」 最後に宮脇さんが、私のネームプレートに付けられた、乳がん撲滅運動のアイテムであるピンクリボンのピンバッジを指さして言った。 「よく気づきましたね~。以前付けてたのが、引っかけて後ろのピンが行方不明になっちゃったんで新しいのに替えたんです」 「それ、少しラメ入ってるんだね。可愛い。ピンクリボンバッチって色々種類があるんだね。この前、スギ薬局でも売ってたよ」 「業者によってそれぞれ違うんですよ。病院やピンクリボン運動してる団体でもオリジナルで製造してるみたいです」 私の胸もとをまじまじと見つめるおば様方に微笑む。 「へ~、そうなんだ。で、これはどこで買ったの?」 「これは、西島先生がくれたんです。乳腺専門医だから、ピンクリボン運動グッズを業者の人が置いてってくれるらしいです」 「えっ!西島先生に貰ったの!?いいな~、私も西島先生から貰った物を胸に付けたいわ。櫻ちゃんズルイ!」 宮脇さんがプンと口を尖らせる。 それに続いて梅田さんと酒井さんも「いいな~いいな~」と声を合わせる。 しまった!  口が滑った! このおば様方みんな西島先生のファンだった! 「ははは・・・。それはせておき、宮脇さん、診察の順番になりましたよ。その西島先生がお待ちです」 私は苦笑いを浮かべ、早くこの会話から逃げ出そうと宮脇さんの誘導を始めた。
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