胸に咲く桜

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そして、宮脇さんも手術をして約2年後に再発をしてしまった患者さんの1人・・・ 「採血の結果は、抗がん剤の副作用で貧血と白血球の減少が少しずづ進んでるね。食事は食べれてる?」 西島先生は、電子カルテに映し出された血液データーを指さし、ゆっくりと説明をする。 「ご飯は食べたくなった時に、食べたいものを食べてます。仕事してるとお腹が空くので自分ではまあまあ食べてるつもりです」 「ならいいね。指先の痺れは?」 「指先の痺れは相変わらずです。でも、家事も仕事も何とか出来てます」 乳がんで使用される抗がん剤は、副作用として指先などの末梢神経障害を引き起こす薬剤が多い。 宮脇さんは強張った指先を擦りながら苦笑いを浮かべた。 「じゃあ、胸の診察をしていいかな?こっちの様子はどう?」 先生は宮脇さんの胸もとに視線を落とす。 「こっちも相変わらず・・・って言うか、新しい子供ができてきました・・・」 宮脇さんは小さなため息を漏らし胸もとのボタンを外す。 ブラジャーに挟んだ吸収パットをずらした瞬間に、ツンと鼻につく臭いが診察室に漂う。
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