胸に咲く桜

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下着の下から顔を出したモノ。 それは、手術で残すことのできた乳房の皮膚を突き破り、血液と体液を垂れ流す塊。 体外に露出する直径4センチ程あるそれこそが、宮脇さんを苦しめる癌そのものだ。 胃がん、大腸がん、肝がん、すい臓がん、肺がん・・・それらよく耳にするがんはどんなに成長しても体の中から出てくることはない。 しかし、皮膚がんを含め成長と共に目に見える癌がある。 私が乳がんの恐ろしさを感じるところは、最初は乳房の中に納まっているものが、成長と共に皮膚を突き破って外に露出することだ。 何人もその状態の患者さんを診てきたが、その姿は「カリフラワー状に露出」と表現されるが、まさにその例えの通りだ。 赤いカリフラワーと言った方が良いかも知れない・・・。 現在の宮脇さんの診断名は、左残存乳房と鎖骨上リンパ節転移。 幸いにも、肺や肝臓などに転移する遠隔転移はない。それはつまり、現在は命に危険はないが、生活の質(QOL)は著しく低下している状態を意味していた。
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