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「この腫瘍、手術で取っちゃう事はできませんか?最近、急激に腫瘍が大きくなってきて匂いも気になるし・・・」
露出された腫瘍から放たれふる臭気を気にしているのだろう・・・
宮脇さんは、私の方にチラリと視線を向け遠慮がちに言う。
服を着ていれば、コットンパット、臭気を消すために開発された医療用パット、下着の3層防御で匂は隠されている。
しかし、それは気候の良い時の状態。
真夏のこの暑さの中、血液と浸出液、更には汗の匂いも加わり洋服を着ていても、完全には臭気を消すことができなくなってきていた。
「お仕事されてるから、余計に気になりますよね・・・」
目を細め、私は心苦しい思いで言葉を漏らす。
宮脇さんが務める会社は、自動車の部品を扱う小さな町工場。
彼女は、約30年以上その工場の発注責任者として働いている。
乳がんだと告知をした際、
「手術が終わったら直ぐに仕事に戻れますか?うちの会社、私がいないと困るんです。入院は嫌です。私がいないと家で主人が一人になってしまうし。なるべく通院でできる治療にしてください!」
癌と戦いながらも、家事をこなし、仕事をこなし、以前と生活スタイルを変えない。
それが彼女の生き方であり、強い要望だった。
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