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「手術で取り除く事はできません・・・」
少しの間を置いて、西島先生が言葉を落とす。
「どうしてですか?・・・他に転移があるのでこの手術をしても無意味なのは解ってます。だけど・・・先生、私はこのままどうなるんですか?このまま腫瘍がどんどん大きくなって、いつか体全体にこんなデキモノができて、醜い化け物になっちゃうんでしょうか・・・」
宮脇さんの表情が不安と絶望の色に染まる。
無理もない・・・
宮脇さんは、この4年間でノルバデックス、フェマーラ、ヒスロンH,ファルモルビシン、ゼローダ、ナベルビン・・・
宮脇さんの乳がん組織に有効であると判断された、何種類かのホルモン剤と抗がん剤で治療してきた。
使い始めてしばらくは、どの薬剤も腫瘍マーカーの上昇を止め効果があるように思わた。
しかし、数か月後にはその期待と安堵は打ち消された。
再発したがん細胞は、宮脇さんと私達医療者をあざ笑うかのように薬剤効果を掻き消し、進化した姿で増殖を繰り返し宮脇さんの体をがん細胞で埋め尽くそうとしている。
人間の作り出す薬剤と悪性腫瘍との戦い・・・それは鼬(イタチ)ごっこと言わざるを得ない。
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