胸に咲く桜

15/78
前へ
/647ページ
次へ
「放射線・・・ですか?それは、この再発した腫瘍に直接照射するってことですか?」 宮脇さんは眉を寄せ首を傾げた。 「はい、腫瘍めがけてピンポイントに照射します。今回は数回に分けて行い、X線の切断作用でがん細胞を選択的に壊死(えし)させる方法を考えてます」 「・・・あの、壊死させるって、腐らせるって事ですよね?壊死させた腫瘍はどうなるんですか?」 「壊死した細胞は剥がれ落ちていきます。新しい皮膚ができるのを助けるために、自然と剥がれ落ちるのを待たず、受診した際に少しづつ切り落としていくつもりですが・・・」 「切り落としていく!?それ、痛いんじゃないですか!?」 淡々と説明を続ける先生の言葉を遮るように、肩を縮めて宮脇さんが声を裏返えした。 「だっ、大丈夫です!腐っちゃった皮膚には感覚がありませんから。痛くないです!ねっ、先生」 私は咄嗟に、怯えた表情を見せる宮脇さんに声をかける。 もう! 剥がれ落ちるとか、切り落とすとか、そんな言葉を選んだら患者さんが怖がるに決まってんじゃん! ったく、このドSドクターがっ!! サバサバした性格から、ナースの間で「ドクターS」と呼ばれる西島先生に同意を求める視線を飛ばす。 「その通り。痛くないから大丈夫」 私の強迫的な視線に気づいたかは不明だが、うんうんと頷きニッコリ笑った。
/647ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71605人が本棚に入れています
本棚に追加