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「あのー・・・一つ聞いて良いですか?」
今まで大人しく私たちの話を聞いていた佐渡さんが突然声を発した。
「ん?どうした佐渡。何か分からないことあったか?」
ユリさんは顔を上げ、自分の隣にちょこんと座りまだ初々しいオーラを放つ佐渡さんに視線を向けた。
「宮脇さんなんですけど・・・どうして手術で腫瘍を取ってあげないんですか?毎日放射線治療で病院に通うの大変なのに」
佐渡さんは首を傾げ、大きな目をパチパチさせる。
「おバカ!あんな育った腫瘍にメスなんて入れたらがん細胞が散らばっちゃうでしょうが。しかも、多発的に重なってポコポコできてるから、広範囲に切除できないでしょ!」
ユリさんは、いわゆる「天然キャラ」の佐渡さんをいじるのが大好き。
佐渡さんの広いおでこをツンツンと指でつつきながら、面白そうにニヤリと笑う。
「ああ!そうですよね~やっぱり。実はそんな気がしてたんですけどね♪」
佐渡さんはえくぼを作り「ふふっ♪」と可愛らしく笑った。
嘘つくな佐渡!
絶対にそんな気してなかっただろ!
っと私がツッコミを入れる間もなく、ユリさんの指が佐渡さんの鼻を摘まんだ。
「ごめんなさい~高峰さん~ホントは知らなかったですぅ~」
容赦なく鼻を摘ままれフガフガともがく彼女。
「知ったかぶりは許さん!分からないことは正直に分からないと言いなさい!」
ユリさんがフンと鼻を鳴らし、佐渡さんの鼻を解放する。
「イタタタ・・・鼻がツーンてしますぅ~。・・・それにしても、乳がんて怖いですね。腫瘍が外に飛び出してくるなんて、この外来に来るまで知りませんでした~」
赤くなった鼻を擦りながら、佐渡さんがヘラヘラと笑う。
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