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私は、瞬きをしながら差し出された紙を手に取り視線を落とす。
「日本でもジェムザールが保険適応される事が厚生省より発表・・・手術不能・再発乳がん患者さんに新たな希望・・・」
冒頭部分に書かれた文字を読み上げる。
「これ、新薬の認可!先生!これ、うちの病院でも使えるんですか!?」
「絶対使えるように手配する」
「良かった・・・やっと新しい薬の認可下りるんだ・・・再発した人に使える薬が増えるんだ・・・」
紙を掴む指に自然と力が入る。
新薬の効能が書かれた文字を目で追い、柔らかな笑みを浮かべた。
「その薬、欧米では4年も前に認可が下りてるんだけどね。日本は乳がん治療の歴史が浅いから、認可が下りるのに特に時間がかかりすぎる。認可待ちしてる薬はまだたくさんあるんだよ・・・」
先生は大きなため息を落とす。
海外で開発され、その効果が立証されてから日本の製薬会社が動き出す。
そのため、認可が遅れ世界の標準治療が使えない日本の医療。
施設によっては、認可された抗がん剤ですら満足に使われない現状。
抗がん剤はとてつもなく高額。認可なしで全額自己負担となれば、種類にもよるが一回の点滴で10万~20万円。
しかも、ほとんどが単品では使用しないため、併用させる薬剤の費用を合わせると30万を超す場合もある。
平均、月に3回点滴をすると考えて、一か月で60万~90万円・・・
一般家庭で支払っていける額ではない。
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