愛しい光が消えるとき

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愛しい光が消えるとき

平日の午前――― 「名取先生、石川さんのCT画像が入りました。呼び込み番号を表示して良いですか?」 外科外来の診察介助をしている私は、電子カルテを操作しながら担当医師に声を掛けた。 「石川さんかぁ……今回はどう?画像確認した?」 診察を終えた患者の記録を続ける名取先生は、一瞬その手を止めて私に視線を送る。 「はい、丁度いま見ています。半年前の画像よりも肝臓の腫瘍が大きくなっています。凄く小さいモノですが、他にも一つ……二つ、おそらく新しい転移だと……」 「そうか、やっぱりもうホルモン剤では抑えられないな。抗癌剤の話をもう一度するか――」 パソコンのキーを打ちながら、目を細めて大きなため息を落とす彼。 「でも、本人は抗癌剤を希望していません。御主人も同じ意見だと……」 「それは何度も聞いた。それでその御主人は?今日こそは一緒に来てるの?」
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