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着物姿の女は軽い会釈を済ませると時雨が眺めていた資料を見た。
「あぁ、ケロベロスの資料ですか。」
時雨はあぁ、と相槌(アイヅチ)を打つ。
「ここ最近、妙な事があってだな。少し資料を引っ張って来たんだよ。」
「それで残っていたん?
仕事熱心やな~。」
「いや、これは仕事ではなく、私の趣味で調べさせてもらっているから、残業代は支払われない。」
「うへぇ、最悪やな。
それって。」
時雨は、苦笑いを浮かべながら、資料を見る。
ケロベロスの資料には幾つかの区画があり、その中の能力欄と記された箇所には契約系と書かれており、そのすぐ後ろには装備型と付け加えられていた。
「へぇ、あの天下のケロベロスは契約系なんやね。」
かぐやは時雨の横から神妙そうに資料を見つめた。
「うむ、魔獣と契りを交わし、魔獣は契約者に力を捧げ、見返りに契約者は魔獣に自由を与える。
この関係を、俗に契約系と呼ばれているな。」
「そんで、自由になった魔獣は人間を襲い、契った人間は力で悪業を重ねる…、やったかね。
なんや、不思議なこっちゃなぁ。」
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