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「ここだな。」
話は2007年08月27日、嵐の中、深夜一時にさかのぼる。
バブル時に開発され、バブル崩壊と共に建設が中止になった廃棄ビルの前に漆黒のコートと狼の仮面を被った男がメモを眺めていた。
「まぁ、ベロの話だとここで合ってるはずだ。」
男の隣りに立っている赤髪の女性が髪をかき揚げながら廃棄ビルを見た。
よく見れば、赤髪の上には犬の耳が付いておりさらには尻尾まである。
「確実に何か出そうな雰囲気だな。
オバケとか幽霊とか。」
「ダンナ、契約者が言うセリフじゃないぜ。」
赤髪が呆れた様に言った。
「俺自身も亡者みたいなもんだしな、同じもんか。いや、肉体があるぶん俺のほうがマシか。」
狼の仮面を被った男がクククと笑うと胸に手を当てた。
数秒間、二人は沈黙すると赤髪は、廃棄ビルを睨んだ。
「行こうぜ、ダンナ。」
赤髪がそう言うと赤髪の周りに赤い火の粉が取り巻き始めた。
「よし、行くか。」
男が赤髪の肩を叩くと、赤髪の女の姿の輪郭(リンカク)がそのまま炎に変わり、狼の仮面の男の両手に渦を巻いて取り付いた。
炎は、次第に形状を変化していき、いつの間にか炎は、光を保ったまま二丁の拳銃に変わっていた。
「作戦開始だ。」
狼の仮面を被った男は、炎で造られた銃口を廃棄ビルに向けた。
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