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少女は朝が酷く嫌い。
光差す世界が嫌い。
明るくなるまでにベッドの中へ。
毎日同じ何も変わらない。
今日も玩具の行進が始まる。
だけどその日はいつもより不機嫌だった。
お月様が真ん丸でお部屋が少し輝いてたから。
狂いそうな時間の流れ。
やけに遅く感じる不快感。
煽るように兵隊が囁く。
『アナタこそ正義』
『アナタなら自分の手で闇を味方に出来ます』
『今こそ正義を魅せてあげましょう』
『アナタが正しいと示しましょう』
少女の幻は簡単には消せないのです。
まるで操られたように
まるで魔法にかけられたように
少女は酷い鬱に犯され
くまさんを片手に
凶器を片手に
闇の中を駆け抜けたのです。
初めて見た現実に目眩を起こしながら
叫んで嘲笑って暴れだす。
ダレニモワカラナイ
真っ赤な手の平を空に翳して優越感に浸る
くまさんだけが私のお友達
くまさんだけが私の家族
「ねぇくまさん楽しいでしょ?初めて見た世界は私達だけのものになるのよ。皆みんな消えてくの。」
少女は初めて笑った。
酷く照らされた少女の姿は
美しくもあり目を閉じたくなる程の異常者だったのです。
今宵は少女だけが生き延びる
それを知っているのは血で汚れたくまさんだけだったのです。
少女は耳鳴りが静まらず
くまさんは腕が裂けて棉が飛び出し
幾年もその姿で少女は時を掛けたのです。
少女が口ずさんだ歌は
あの兵隊たちが唄っていた歌だった。
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