セレヌと薔薇園

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私の名はセレヌ。 本当の名は知らない。 皆は私を悲劇の少女だと言うわ。 私は生まれて来た意味を知らない。 幸せとは何かを知らない。 私が生まれた場所は何もない静寂な場所だった。 だけど私は何もないと言うことが不自由過ぎていつしか耐えきれなくなってある時一人生まれた場所から逃げ出した。 私の前にあるのはコンクリートの塊と喧騒。 知らない人達。 知らないお店。 見るもの全てが新鮮だった。 だけど人付き合いが苦手な私は直ぐに心病んだ。 冷たい街中で叫んで泣いても視界には優しく無い世界だけ。 だけど私が選んだのなら苦しみを強さに変えることが出来る。 その一進でたどり着いた場所。 其処には私の求めている世界が広がった。 真っ赤な薔薇で埋め尽くされ酷く歪んで見えない眼が一瞬で冴え渡り光を示した。 生きていく為に沢山の犠牲を伴う。 だから何か生きるのが不安になると私はその場所へ行った。 淡い香りと華やかな色彩。 可愛く美しいのに棘を持つその可憐な華にいつしか意識が吸い込まれていく。 薔薇はそう私の毒を吸収し自らの寿命にする。 私は操られるようにその場所へ向かい話し掛ける。 記憶や思い出などいらない。いつか傷付くだけだから。 薔薇はこんなにも素敵なのに儚く散る。 私がその場所に通うようになり日々窶れてはいたけれど、痛みが和らぎ悲しみは薄れ、何かが取り除かれ、癒されていた。 今日は堪らなく苦痛だった。 そして体が重く辿り着くまで胸が締め付けられた。 華園 真っ赤な薔薇に囲まれて私は自由になった。 それは初めて流した涙が暖かいと言うことを教えてくれた。 この薔薇に囲まれて私は倒れた。 それは見たこと無い目眩の中で見た夢と同じ。 此処で私の命は絶えた。 見付けられた私は薔薇のつるに巻き付かれ真っ白な体に刺が刺さっていた。 それは昔絵本で見た眠り姫みたいで、息絶えてやっと私を誰かが見てくれた。 皆は私を悲劇の少女だと言う。 だけどそれが今少し嬉しかった…。
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