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ジョンには無くとも、ジャックには見覚えがあった。
ワッペンには82空挺の“オールアメリカン”マーク。
二等兵のそれは、彼の分隊の隊員だと分かった。
しかし、それを判断したのは、その遺体を調べて出て来た家族への手紙―つまり遺書の名前を見たから。
“顔が無かった”のだから仕方ない。
「ホーキンスだ。」
「知ってるんですか?」
「…俺の隊の奴さ。」
「………残念です。」
その言葉にジャックは、ジョンに振り向いた。
冷徹な目を向ける。
「なんでだ?
こいつはこの戦争の先の苦しみを知らずに死ねたんだ。
それはそれでいいだろ?」
ジョンは黙った。
この戦場のど真ん中に落とされた先を考えてなかった彼に、急に不安が襲う。
その不安は、実は飛行機に乗っているときに既に感じてはいた。
しかし、降下した後、ジャックの背中を見ていて感じなくなっていたのだ。
速くなった鼓動に促されて、辺りを見渡すジョンに、軍曹はホーキンスから剥がしたサブマシンガンを差し出す。
M1A1トムソン短機関銃だった。
「トムソンだ。
使えるな?」
ジャックがそういうと、若い兵士はコクコクと頷く。弾倉ベルトを腰に巻き、トムソンを構えたジョンは、M1911をジャックに手渡した。
使いにくいボルトアクションを肩に担ぎ、そのM1911をナイフと共に構える。
そしてジャックは、また闇の中を歩いていった。
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