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「軍曹、
さっきのホーキンスって兵士、何であんな死に方を?
敵兵でしょうか?」
「…否、敵に見つかって殺されたなら、武器や装備を取られる。
でも、取られてなかったということは、撃たれた訳じゃないんだろう。
恐らくは…降下中、屋根に頭をぶつけて潰れたんだと思う。」
まぁ、勝手な想像だがな。
ジャックは最後にそう付け足した。
あの二等兵の装備を拝借したジョンは、彼の物だったトムソンに目線を落とし、少しばかり心が悼む。
全く光がない道無き道を、ただひたすら二人で歩いている孤独感をも覚えた頃、ようやく明かりを見つけた。
電気ではない。
それは真っ赤な、真っ赤な。
…火だった。
鯨が燃えている。
緑色の鉄の肌は、そこここで剥がされ、めくれ、飛び散っていた。
中にはまだ、人影が確認できたが、ジャックは咳のような息をする炎を見ている。
何も言わず、ただ黙って。
ジョンはそれを食い入るように見入っていて、ついつい周りの警戒を解いていた。
航空機燃料の明かりに連れられて、飛虫が飛んでくる…
だが、どうやらそれだけではなさそうだった。
「伍長、塀に隠れろ。
トムソンを貸せ。」
ジョンは慌てふためいて、ジャックの差した腰の高さぐらいの塀に走った。
ジャックもサブマシンガンの薬室に45口径弾を装填する。
二人が武器を取り替えたその瞬間、あの火の向こうに、動く人影を見つけた。
ジャックはそれにトムソンの短い銃身を向け、鋭い眼光で睨む。
ジョンは狙撃銃を構えはしたが、緊張で唇を渇くのを防ぐことに必死になっていた。
目に映る影が、その大きさを増して、正体が分かる前に、ジャックは聞こえて来た声で判断できた。
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