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「(…飛行機………アメリカ兵……)」
遠くて解らないだけで、ジャックはドイツ語を聞き分けていた。
3人の影は、遂にあの火の元で露になる。
ジャックは時宜を待っていた。
奴らが隙を見せるその刹那を。
さっきのジャックたちのように、火を噴く鯨を見学したドイツ兵たちは、そこで楽しそうに語らった。
その中の一人がキョロキョロと周りを見渡して確認した後、3人は再び移動を始めた…
その時だった。
ジャックは塀から身を出し、トムソンの銃口に火を点す!
その昔、トムソンという男が考え出したサブマシンガンはマズルのジャンピングを始めたが、軍曹は引き金を引き続けた。
その発砲に驚いたドイツ兵だったが、理解する前に2人は膝から崩れている。
1人がライフルを盾にしゃがんだものの、逃げる場もなく胸に銃創を負い、その若い顔をしかめて地面に平伏した。
ジャックは空になった弾倉を引き抜いて、ジョンの小脇に巻いてあった弾倉をひとつ盗み抜いて差し替える。
トムソンのまだ熱い薬室に弾が装填させ、ジャックはドイツ兵たちが倒れた場所にライフルを構えながら駆け寄った。
鮮血が衣類に弾け飛び、赤々とてかっている彼らは、もう微動だにしない。
弾丸に肉が焼け、白く煙をたてている事を改めて確認すると、ジャックは、隠れるように言ったジョンを手信号で呼んだ。
軍曹。
とジョンが声を掛ける近さになって彼はようやくトムソンを下げる。
そして同時に敵のマシンガンを見つけ、引っ掛かりながらも引き抜いた。
一度は手を挙げたが、もう魂のない死体の右腕が力無く地面に落ちる。
ジャックはジョンにこう言った。
「使えるか?」
ジョンはその差し出されたマシンガンを受け取り、それを眺めた。
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