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「立て!!」
手信号を待っていた隊員は、それに促されて、フックを持ちながら重い腰を上げた。
それぞれの装備が音を立てて揺れ、その度にジャックの部下たちは足下がおぼつかなくなって、ブーツの靴底が下の鉄板に音を立てる。
「フック装着!」
皆が、迷彩のペイントを施された顔をあげ、手にしたフックを頭上に這わせたワイヤーに掛け始めた。
そして、しっかり掛かったのかを、引っ張ったり、揺らしたりして確かめる。
これが掛かって無かったならばパラシュートは開かず、彼らは奈落の底に叩き付けられることになる。
高度3000フィートの上空、飛行機から紐なしバンジーなんて馬鹿のすることだが、もしかしたらということも必ずしも無いというわけでもなかった。
それは隊員も隊長も分かっていて、皆がフックアップしたのを確認した直後、隊長は叫び倒した。
「装備確認!!!」
自分のバッグを、それも引っ張ったりして外れてしまわないかを確認し始める。
それだけではなく、自分の前の隊員のバッグも確かめるのだ。
背中に全く手が届かない彼らには当然のこと。
自らは仲間が守り、仲間が自らを助ける。
この、今時流行らない言葉が、隊員達の支えとなっていた。
中でも隊長の声が聞こえている間は、今の自分が生きている証ともなり得るのである。
その彼の声が再び響こうとしたその刹那、彼等が初めて聞く破壊音が襲った。
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