オーバロード

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基礎訓練で初めて耳にしたバズーカの爆発に似た音だ。 …この機からあまり離れていないところの、空中での爆発。 敵は端から分かっていた。 そして、耳にたこができるぐらい聞いた授業で、教わったことが確かならば… ドイツ軍 36型88mm対空砲(FLAK88)。 更に、闇夜の中、空に向かって伸びる閃光の正体は… 同軍の4連装20mm高射砲。 どちらにせよ、その両方の群れからの集中砲火を浴びながらこのC47の集まりは、頼りなく千鳥足で飛んでいる。 そして、隊員達は窓の外に絶望的な景色を目の当たりにした。 仲間の機体から、とてつもなく赤々とした炎が煌々と上がっていたのだ。 その中から人間の形をした火の球が地上に向かって陥る、その光景は、見たものを釘漬けにする魔力があって、異常な恐怖心を煽るに十分なものだった。 そして遂に彼等にその時が来た。 フライパンをコンクリートの角に打ち付けたような音を何倍にもした破壊音がする。 しかも操縦席のある方からのものだ。 しかし隊員がそれに絶望する暇のないまま、輸送機はその高度を一挙に下げていった。 崩れ落ちる彼等。 …もうおしまいだ。 誰もがそう思った瞬間…機体は高度を下げるのを途端にやめた。 親の敵のような挙動制御の後、レッドランプがグリーンに変わったのだった。
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