新しい世界

2/2
前へ
/32ページ
次へ
いよいよ大阪から出る事になったポチ。 自分を変えたい。変わらなくてはいけない。そんな思いを胸に、滋賀の地で生活を始めました。 初めての一人暮らし。 浮かれまくり。 「なんでもやりたい放題なんじゃね?自由最高!!」 まず始めに彼がやってみた事。それは。 眉ぞり。 一回細くしてみたかったんよ。 それから 半身浴。 みんな家族はいつもいっぱいお湯入れてたんやもん。 そして最大のイベントが 風呂で漫画を読む。 最高に楽しかった。 でも楽しい事ばかりでもありません。 彼は貧乏でした。 家から出たはずなのに、なぜか家に家賃を入れる暮らし。 ……理不尽やなぁ。 「男の料理を極めるんや!」 そんな気持ちで持ってきた料理道具も役に立ちません。 ……キッチンが無いってどういう事やねん。 一人寂しく部屋でコンビニ弁当を食べる日々。 滋賀に来たのは自分も合わせて4人だった。 俺だけが極端に若く後はおじさんだった。 みんなで一緒に来たのに、人間関係はサバサバしたもんで、会社終わってからご飯食べに行ったりとかが無かった。 確かに家族はいないから気持ちは楽だった。 でも友達もいないし寂しい。 新しい場所で働いていても、結局する事と言えば大阪の友達に電話。 なかなか新しい環境に馴染めず、友達も出来ず一人で仕事場の休憩室でボーっとしていた日々。 楽しそうに会話しているのを横目で見ながら 「楽しそうやなぁ……。」 と思ってみたり。 ……そんなある日。 休憩室で一人、椅子に座って携帯で友達にメール。 ふと気が付けば、周りを人に囲まれていた。 どうやらこの人達の場所らしい。 なんとなく気まずくなり、周りを見渡すと一人椅子にも座らず立っている人がいる。 ……これがキッカケかもしれない。 「……よかったら座ります?」 「ありがとう!」 特に何も無く、休憩は終わる。 ……まぁこんなもんかな。 ……何気ない小さな親切。 『ダサい靴下』の男の世界は、確実に変わり始めていた。  
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

416人が本棚に入れています
本棚に追加