孤独

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……彼の心に芽生えた気持ち。 それは 『死に対する憧れ』 でした。 何をやっても上手くいかない。 「別に生きててもしょうがないんちゃうやろうか?」 どんどん冷たくなっていく家族。 先の見えない未来。 次第に追い込まれていきました。 「……ここから飛んだら楽になれるやろか……」 当時住んでいた家は団地の五階。いつもベランダを見てはそんな事ばかり考えていました。 ……でも実際そんな勇気があるわけもなく、ただ思うだけの日々。 『明日まで頑張ろう』 毎日自分に言い聞かせていました。 でも、そんな彼にも彼女がいました。 O阪時代の終盤の頃に、なんとか免許と車を手に入れたんだけど、車を維持するお金がない。 この彼女には随分とお世話になった。 ……特に金銭面で。 しかも彼女は……女子高生。 学校帰りにレジ打ちのバイトをしてるだけ。 そんな女の子に車のガソリン代を出していただいたり……。 ……本当にこの子には可哀想な事をしたと思う。 彼女に何もしてやれない。 欲しい物一つ買ってあげられない。 どこかに連れて行ってあげようにも、ガソリン代も無い。 でも、一緒にいたかった。 一緒にいる時だけは、『誰かに必要とされている』と感じられたから。 ……が。 そんな暮らしも終わりを向かえる時がきました。 ある日携帯にメールが。 『もうこんな貧乏な毎日は嫌だ』 もう細かく覚えてないけれど、内容はこんな感じでした。 『……またお金の話か?そんなに貧乏やったらアカンのか?……貧乏人には恋愛する資格すら無いのか?』 ついに、唯一心を許せる人からも見放されました。 仕事を続けられない。 お金を稼いでも家に持っていかれる。 彼女にも捨てられる。 家族にはもう完全にクズ扱いをされている。 「……もう限界や……」 ……孤独感に押しつぶされそうになりながら毎日死について考える日々。 そんなある日。 彼の携帯に電話が入ります。 「……はいもしもし。」 この一本の電話が、今後の彼の人生を大きく変える事になる。 彼はまだそれを知りませんでした。  
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