転機

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「……はいもしもし」 彼の人生を大きく変える事になる一本の電話。 「もしもし。『ポチ』ちゃん?久しぶり!元気してた?」 電話の相手は昔お世話になった派遣の営業さんだった。 向こうが『一身上の都合により』退職してしまい、俺も派遣の会社を変えたので電話越しでも会話するのは数年ぶりになる。 「めっちゃ久しぶりですねぇ!そっちも元気してました?何か用事ですか?」 「昔自分が担当してた人のリストを見てたら『ポチ』ちゃんの名前を見つけてな。ちょっと電話してみたんよ。」 「って事は仕事の用事ですか?」 「実はそうなんよ。『ポチ』ちゃん今仕事してる?」 「今は仕事してますよ。」 「そっち辞めてうちに来てくれへんかなぁ?」 「……どんな仕事なんですか?」 「……『ポチ』ちゃんて免許持ってたっけ?」 「最近取りましたよ。」 「……『ポチ』ちゃん滋賀で働いてみいひんか?」 「……はい?滋賀?」 「うん。滋賀。寮暮らしになるわ。」 ……普通に考えたらとんでもない話だろう。 ……でも彼は煮詰まっていた。 これはチャンスなんじゃないだろうか? ……自分を変えたい。変えなくてはいけない。 「……わかりました。行きますよ!」 今のままの閉鎖的な状況で暮らしていてもダメになってしまうだろう。 ……その電話から一週間もしないうちに彼は滋賀にいた。 新しい環境で仕事をする決意。 この決意が、大きな流れの始まりになる。
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