暖かかったとき

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ある日突然、ママの身体のキズの秘密を知るときがきた。 その日もボクは兄弟たちと遊んでいた。 ガサガサ… どこからか何かがこちらへ近づいてくる音が聞こえた。 日だまりで休んでいたママは身体をピクッとさせて立ち上がった。そして、鼻をクンクンさせてその主が何なのか確かめていた。 ボクにはタヌキでもネコでもないみたいぐらいなことしかわからなかった。 しかし、ママの顔色がみるみる険しい顔にかわっていった。 ママは今までにみたことがない怖い顔でボクたちに言った。『ぼうやたち、隠れなさい!』 ボクはすごく怖くなり急いで木々が生い茂る中に隠れた。 その音の主はだんだん近づいてきて、ついにボクの目の前までやってきた。 わぁ… 初めて見る生き物だ。不思議なにおいがする。 怖い気もしたけどボクは初めて見る生き物に好奇心をそそられた。 ママにそっと聞いてみる。 『ママ、あの生き物はなんて言うの?』 いつもだったらママは優しい瞳でボクの顔を見つめて教えてくれる。 けれど今はその生き物を少しおびえているような怖い顔で見つめたまま言った。 『人間…』 ニンゲン…? ママの身体が小刻みに震えていた。
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