声(古→キョン)

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プルルルル…プルルルル…ガチャ 『此方は 留守番サービスセンターです…』 電子音的な音で淡々と繰り返す声に また 溜め息をつく 本当は彼の声を聞きたいのに… 何度 電話をしても 受話器越しに聞こえるのは 電子音で繰り返される声だけ メールをしても返ってくる気配は無く 何だかやるせない気持ちになる 「何の為の携帯なんでしょうか」 誰かに言うでも無く 自分の声だけが部屋に響く 僕はそれでも 懲りずに電話の通話ボタンに指を置く もしかしたら もしかしたら 彼は起きてるかもしれない 次こそ電話に出てくれるかも知れない プルルルル…プルルルル…ガチャ 『此方は留守番サービスセンターです』 また 電子音的な声 「キョン君…」 この時間が僕に取って楽しい時間なのに 幸せな時間だからこそ 僕は今を頑張れるのに… 「あなたは夢の中なんですか? 僕を置いて夢の中なんですか?」 通話ボタンに指を置く 次で最後にしますね そしたら もう僕から電話するのは 止めにしますから だって そうでしょう? 会話が出来ない電話なんて 無意味でしょう? 期待なんて無意味でしょ? 「僕も馬鹿ですね…」 期待していて 期待していなくて 出ない携帯電話にまた電話をかける もしかしたら 彼が気づいてくれるかもと 甘い期待をだいて また 僕はやるせない気持ちで 貴方の声を求める プルルルル…プルルルル…ガチャ 『此方は 留守番サービスセンターです…』
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