その名も『とらぶるハンターズ』

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   春、桜咲く春。木々の木漏れ日を全身で受け止める。こんなのどかな一時を、十色 学はなんと待ち望んだことか。  今年、高校2年生になる学は、一人この貴重な時間を満喫していた。 「ふぅ…久しぶりだなぁ、こうしてゆっくりするのも」  校庭脇にあるベンチに腰掛け、ジュースを片手にくつろいでいる。  校庭には部活で登校しているサッカー部が、その青春を謳歌している。テニスコートにはテニス部が、校庭の隅では潰れかけの野球部が、それぞれ練習している。  今は春休みだ。だが、学は部活に入ってるわけでもないし、補習で来てるわけでもない。ただ待っていろとだけ伝えられて、こうして待っている。 「それにしても…なんで俺が来なくちゃなんないんだよ……」  独り言のように文句を言ってジュースを飲みほす。ゴミを捨てるためにクズかごまで歩く。  そこへ、サッカーボールが飛んできた。 「おーい!わりぃ、ボール取ってくれー!」 「おぅ!」  そう言ってボールを蹴ろうと勢いづけるため距離をとる。  すると 「とりゃぁー!」  突然、女の子が現れ、ボールを思い切りける。が、ボールはサッカー部員出はなく学に向かって飛んいく。 ドスッ! 「ごふぅっ!!」  見事に直撃。寸分の狂いもなく、腹にクリーンヒット。  転がってるボールをサッカー部員が無言で取りにくる。 「………」  サッカー部員は申し訳なさそうに頭を下げて練習に戻っていった。
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