600人が本棚に入れています
本棚に追加
今の時代、うさぎや僕たちのファッションは理解されない。嫌な時代に生れついてしまったといつも思う。街を歩けば、みなエナメルの生地のぴったりとしたものを体に身につけて、それにキラキラと光るものを巻き付けては、あなたのそれは綺麗だ私のはまだ地味だと馬鹿みたいに言い合ってる。あんなB級のSF映画に出て来る異星人のようなスタイルで、自分がファッションの最先端に位置していると思い込んでいるから、実に憐れだ。
僕が普段はいている赤いコンバース、これを手に入れるのには本当に苦労した。何しろ偉大なるコンバースは、今の時代にはほとんど普及していなかったのだ。
僕がよく利用する映画館――主に昔にヒットした映画を再上映する――の館長が言っていたが、彼らが若かりし日には誰もが身につけていたという。彼は白人ラッパーのポスターを事務所に貼り付けていた。君達は若いから知らないだろうけどね、彼はエミネムっていうんだ。今はもうすっかりよぼよぼのお爺さんになってしまっているけどね。ところで今日も映画を見に来たのかい? 『パイレーツ・オブ・カリビアン』っていう娯楽性の強い映画なんだけどね、知ってるかい? 知らないだろうなあ。何しろすごく古い映画だし、主演はジョニー・デップっていう俳優なんだが、彼も本当に古い俳優さんだからねえ。ジョニー・デップなんて、名前も聞いた事ないだろ?
これが僕たちの時代だ。
最初のコメントを投稿しよう!